鑑賞時の心得
日本刀を鑑賞する上で、留意すべきマナーは沢山あります。ここではその中の幾つかをご紹介しましょう。
一つは、日本刀に対して最低限の敬意を持つということです。いい加減な気持ちで扱うと思わぬ失敗が起こり得ます。日本刀の歴史は長く、数々の名作を創り出した刀匠の存在がそこにはありました。その事実を蔑ろにすることだけは無いようにしましょう。
二つ目は、決められた作法を守ることです。日本刀を趣味とする人の多くが守っている作法があり、それらの作法が決められた背景にはそれなりの理由が存在します。それらを守ることで、日本刀に対する姿勢も随分変わることでしょう。具体的には、鑑賞前に手を洗うこと、指輪や時計は手から外しておくこと、刀を前に礼節を失わないこと等々です。詳しく語り始めると長くなりますので、お時間のある時に別途調べてみることをおすすめします。
作法を一通り終えると、いよいよ刀を鞘から抜くことになります。特に初めての人には危険も伴いますから、必ず経験者の元で行うのがよいでしょう。
ちなみに刀を抜く際には二段階の抜き方が求められます。まず鯉口を切った後、ある程度一気に抜くのです。一気に抜かなければならないのには理由があります。ゆっくり抜いてしまうと鞘と刀身が触れ合う回数が増えてしまい、結果的に刀身が傷つくことがあるからです。但し周りに人がいない状況で行わなければ、抜いた勢いで人を切ってしまう可能性があります。
抜き方については初心者が誤りやすいポイントで、よく見られるのは両手を左右に開くようにして大振りするものです。この抜き方は鞘と刀身を触れ合わせる可能性が高く、非常に危険ですから避けましょう。正しくは右手を後方に、左手を前に押し出すようにして抜きます。鯉口を切る時は太ももの上に置くと上手くいくでしょう。無事に抜き終わったらそのまま鑑賞することになりますが、刀身は寝かせないようにすることが大切です。立てた方が人を傷つける可能性が低くなりますし、ライトにかざして地肌を見るのにも便利です。言うまでもありませんが、刀身は素手で触れてはいけません。また柄を外してもいけません。日本刀の扱いもまた奥が深いものなのです。