刃文について
刀を製作する工程の中に、焼き入れと呼ばれるものがあります。焼き入れにより刀身を強くすると同時に、刃文を生じさせることができます。なお刃文というのは白く縁どられた部分ではありません。この白さは研師が作るものであり、基本的にはどの角度からも見ることが出来ます。それに対して刃文は特定の角度でなければ見えませんし、しっかりと確認するためにはライト等を必要とすることもあります。
刃文には直刃と乱刃とがあり、刃文が真っ直ぐかどうかで分類されます。直刃はその直線の広さによって、乱刃はその形によって下位分類することができます。刃文というのは、非常に奥深いものです。もともと刃文は自然に出来るものでしたが、時代が進むにつれ、刀を作った刀匠の個性や流派ごとに異なる特徴がみられるようになりました。そういった点に着目して鑑賞してみると、いつもとは違った見方ができるかもしれません。
さて、日本刀を鑑賞するには、刀そのものの知識に加え、鑑賞時のマナーも押さえておきたいものです。もちろんマナーといっても伝統作法のように厳格なものではありませんが、日本刀の価値、繊細さを考えれば、扱いには注意を要することは当然だと言えます。また刀という性質上、軽い気持ちで鑑賞すると思わぬ怪我を負うこともありますから、注意しなければなりません。ここではそのマナー、注意点を幾つか挙げておきましょう。
なお前提として、鑑賞の際は「飾られたものを眺めるのみ」など所持者に許された範囲にとどめなければなりません。所持者の許可なく触るなんて、もってのほかです。
まず刀身は鋭利ですから、直接触れないようにします。これには危険を避けるという目的もありますが、同時に刀身を錆から守るためでもあります。素手で触ると油が付きますから、そこから錆びてしまうのです。どうしても触る必要がある場合は手袋をしたり、布を使ったりしましょう。
マナーの二つ目は私語を慎むことです。鑑賞中はあまり話さない方が無難です。何故なら吐息が刀身にかかるだけで錆びる可能性があるからです。刀身に向かって息を吐いてはいけないことは昔の日本人もよく心得ていました。わざわざ懐紙を咥えて取り扱ったほどです。
三つ目のマナーは刃先を他人に向けないことです。当然と言えば当然ですが、本物の日本刀は簡単に人肌を切ってしまいます。いくら本人にその気が無くても、何かの拍子に他人を傷つける可能性は十分にあります。鑑賞に集中する場合は、周りに人がいないことを確認するほうがよいでしょう。