入西の作風について
入西の作品は、残された見聞資料が十分ではありません。とはいえ、作のひとつは『光山押形』『古刀銘尽大全』などにも所載されています。ここでは実査できた二口から、その作風をできる範囲で解説いたします。
銘として「安芸国入西」と切られてある点はもっとも注目すべきところです。古来の諸伝書では、筑前入西が能登に安芸に移住したと述べられています。作風からみても、また彼の後にも筑前から安芸に移住、あるいは往来した者があることによってもうなずけるのではないでしょうか。
以上の資料を基礎として入西の作風を述べると、以下の特徴がみられます。
太刀の姿としては、身幅の細いものと尋常なものとがあります。彼の作のうち、ひとつは反りが深く、細身のものは小鋒詰まり、鎬幅庵棟も尋常です。『古今鍛冶備考』所載のものは、短刀か刀を磨りあげたものかははっきりとしませんが、平造の短刀とすれば身幅がやや広く、やや寸延びのもののように思われます。
地鉄は板目肌がもっとも詰まり、流れごころの肌が交じり、地沸は細かに厚く、鉄味はねっとりとしてやや白気ごころがあります。刃紋は細直刃小足入り、匂深く小沸つき、ややうるみごころがあるのが特徴です。
帽子は小丸に浅く反っています。彫物は棒樋を彫り、角留め、丸留めもあり、もちろん時代の特色として搔通し、搔流しなどもあるべきでしょう。茎はわずかに反り、先は刃上がり栗尻で、鑢は浅い勝手下がり。銘は行書体で二字銘または長銘に、二字銘のものは目貫孔の上部中央に切られています。
#入西 #刀剣 #日本刀 #歴史