短刀 銘 左 筑州住について
『短刀 銘 左 筑州住』は、左文字の作とされる短刀で、現在は国宝・重要文化財(美術品)に指定されました。
秀吉の蔵刀を本阿弥光徳が写した刀絵図には「御物 じゅらく 七寸八分」としても掲載されています。突き上げ帽子の様子から湯走りのあたりまで丁寧に描かれており、当時は今よりはかなりふくらがあったことがわかるのではないでしょうか。
同絵図の『慶長五年本』によると、「しゅらくより上」で、「長さ七寸八分半」とも書かれています。さらに『大坂腰物帳』には「一 左文字 しゅ楽より 慶長十六年五月大御所様え被信之」とあり、最後には家康の元へ戻ったことがうかがわれます。
こちらの『短刀 銘 左 筑州住』の長さは、およそ23.6㎝(七寸七分九厘)で、反りはわずか。平造、三ツ棟にはわずかに反りがつき、ふくらは枯れぎみ、小振りの短刀です。
地鉄は小板目肌がよくつんでいるほか、地沸は厚く、細やかでみごとな地景が入り、湯走りごころもあって鉄味が冴えて明るく澄んでいます。刃文は、小湾れに互の目を交じえて足を入れ、匂深く、小沸がよくついており、匂口が明るく冴えているところも徴です。
帽子は、強く突き上げて反りを深く焼下げ、裏帽子先より少し返ったところに光の強い大粒の沸がかかり、棟焼が見られます。茎は生ぶで入山形になり、鑢目は大筋違で、銘は表に「左」、裏に「筑州住」と細鏨でのびやかに切られています。
左文字は南北明朝時代を代表する筑前の刀工です。彼らしく、いかにも力のあふれた名作といえるでしょう。
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