越前康継の脇差について
この「脇差 銘 指表ニ奉納尾州熱田大明神、指裏ニ両御所様被召出於武州江戸御劔作御紋康之字被下罷上刻籠越前康継」は、初代康継による脇指です。代表作の一口として名高く、康継を研究するうえでも、特に重要な資料といわれています。
長さはおよそ35.4cm(一尺一寸七分)、反りはおよそ0.6cm(反り二分)。身幅が広く、わずかに反りがついています。寸延びで、表面には竹、裏面には梅が彫刻され、見事な装飾が施されています。
銘としては表面に「納メ奉ル尾州熱田大明神」とあり、製作目的が明らかで、実用ではなく奉納目的で作られたことを示しています。そのため、目釘孔が開けられていません。
裏面の銘文には、「両御所様ヨリ召出サレ、武州江戸二於イテ御剣ヲ作ル。御紋、康ノ字下サル。罷リ上ルノ刻、籠ム。越前康継」とあります。慶長十年または十一年に家康および秀忠両御所の命で召し出されて鍛刀し、葵の紋と「康」の一字を賜り、康継と改名しましたが、その帰途、故郷の越前に帰る折に(罷上刻がその意)熱記内の彫りと思われます。
地がねは板目肌がしっかりとつみ、地沸が均等に付いており、非常に美しい仕上がりです。刃文はのたれに砂流しがかかり、互の目が交じって匂いが深く、沸がよくつきます。帽子はのたれ込みごころで、波の特色が見られます。
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