店主ご挨拶
豊富な鑑定実績で確かな査定をお約束
私こと、つるぎの屋の店主 冥賀吉也も今年(2017年:現在)で古希を迎える年齢になりましたが、今までに数多くの諸先輩方に刀剣・小道具の鑑定のみどころ、極めどころをお教えいただきました。特に今から50数年前の学生時代には、毎月10数回の各々の刀剣研究会に出席させていただき学ばせていただきました。主なものとしては、現在でも開催されている日本美術刀剣保存協会の研究会があげられます。当時、本間薫山先生、佐藤寒山先生、本阿弥日洲先生といった今では考えられないような大先生方が毎月交替で講師に立たれて、独特の口調で講義されていたことが思い出されます。日本刀剣保存会の研究会は、後楽園の裏側にある小石川の涵徳亭で夕刻より開催され吉川賢太郎先生が講義されていました。また、当時は夕刻から夜にかけて開かれる研究会が多かったように思います。
上野:精養軒の横にある料亭:梅川亭の二階では本阿弥光博先生が、刀苑主幹の村上孝介先生の百刀会は新宿の新大久保にある皆中稲荷神社で、春霞刀苑の犬塚徳太郎先生は湯島天神で行われていました。
他では、神田神保町にある第一相互銀行の四階講堂で東京刀剣会があり、池田末松先生が講義されていました。また、刀甲会では高田馬場にある水稲荷神社で行われ若き日の広井雄一先生が担当されていました。
研究会の中でも最も緊張する勉強会が刀和会でありました。いわゆる佐藤寒山門下生が集う会で、古参では、柴田和夫氏、福士繁雄氏、高橋信一郎氏、飯田一雄氏、広井雄一氏、国広浩典氏など錚々たるメンバーがおり、その他に刀職者、研究者などを加えて約60名ほどいらっしゃいました。刀剣博物館の四階講堂でやはり夜に行われていました。会場は常に静まりかえり私語などは言語道断でありました。
寒山先生の解説中に「君、何故その札を入れたか、説明しなさい。」とおっしゃられることがあり、その時の心境たるや、今でも思い出しただけでも冷や汗が出る思いがいたします。しかし最も勉強になった研究会でありました。
学生時代に最も印象に残るのは国学院大学 日本刀研究会の夏期合宿でありました。静岡県三島市にある佐野美術館で1週間にわたり朝から晩まで名刀を見続けました。毎日、日替わりで講師として大学の先輩である小泉富太郎氏、加島進氏、広井雄一氏、大野正氏など諸先輩方に来ていただきました。4年間、佐野美術館で学んだ基礎知識が今でも非常に生きています。渡辺妙子先生には学生時代より現在までご指導いただき深く感謝申し上げています。
大学卒業後、(株)刀剣柴田に入社させていただきました。恩師である柴田光男先生には特に新々刀に関して教えていただきました。例えば、山浦清麿の刀を鑑定した場合に、その刀が清麿のいつ頃の作品であるか、そしてその評価がどの位のものなのか、作風ばかりでなく、茎の鑢目、銘、真偽に至るまで、刀剣商としての見方を教えていただきました。また、有名刀工の真偽に関しては書物では決して書かれていません。師匠独自の見方、すなわち秘伝ともいえる重要なポイントを、その場その場でさりげなく教えていただきました。今でも、その教えてが非常に役立っています。
修行中の主な職場は大丸東京店にある刀剣コーナー勤務でありました。幸いにも荒木斎蔵先生が店長を勤めておられました。先生は若い頃から刀剣を研究され刀剣鑑定に関する知識は素晴らしいものを持っておられ、どんな質問にも惜しげもなく教えて下さいました。教えていただいたことを少しずつまとめ、毎月の月報:麗に「荒木斎蔵刀剣教室」として数年間にわたり連載として発表させていただきました。
30才代に入り結婚・独立と続き埼玉県の蕨市に10年間ほど移り住みました。その頃、浦和市に刀剣研究連合会があると聞き、得能一男先生にお教えいただきました。その研究会は個銘が当たるまで入札を続けるというユニークな方式を取っておられました。しかも最上作などの刀剣ばかりではなく中上作あたりのものが時折入っており大変に鍛えられました。例えば、匂口の締まった直刃に段映りが二重・三重とあらわれた一見すると青江や古三原、あるいは因州景長などを考えられる作であったがなかなか当たりません。五畿七道を巡ってやっと南海道の簀戸国次にたどり着いた苦労した思い出などがあります。
また、この頃から15年間ほど藤代松雄先生に教えていただきました。いわゆる先生のお弟子さん達が集まる勉強会で先生のご自宅で夜に行われました。藤代先生は寡黙な方で多くを語られません。鑑定刀の解説も「よく鑑れば解る」といった具合で簡単に終わってしまうことが多くありました。ところが、こちらから質問させていただくと徹底的に教えて下さりました。「もう先生、十分に解りました。」とお答えしても「何が解ったのだ!」とお叱りをうけ、何冊もの刀剣書を奧の書庫からひっぱり出してくださっては解説して下さいました。「映りの見方」「備前物と相州物の彫りの違い」などが印象に残っております。
小道具については(株)刀剣柴田で修行中に同じ柴田門下の山田均氏、稲留修一氏、菅原堂明氏たちと月に一度、笹野大行先生のご自宅を訪問し、特に透し鐔について教えていただきました。勉強会の後は必ずサントリーウィスキーのオールド1瓶を飲み干すことが決まりで、そして最後に奥様の手作りのサンドウィッチとメロンを美味しくいただいたことを今でもよく覚えております。
40代になってからは全国刀剣商業協同組合の仲間達と福士繁雄先生に月に一度、後藤家を中心とした小道具を教えていただきました。いつも15名ほどが組合事務所に集い、名品の1点1点の見所、極め所を惜しげもなく教えていただきました。お陰様にて海外や交換市場などで掘り出し物を見つけることが出来るようになりました。年に一度の福士会の旅行会は北海道から沖縄まで各地の愛好家や刀剣商、博物館を訪問して勉強させていただいた楽しい思い出が一杯あります。
現在、私も霜華塾をはじめとする各地の刀剣研究会から講師としてお招きいただくお声をかけていただき、皆さんと共に刀剣を勉強しておりますが今まで諸先生や諸先輩方からお教えていただいた様々な知識を多くの愛刀家に伝え、刀剣界に恩返しが出来るように努めていきたいと考えております。
平成29年5月吉日