蜂須賀正恒
蜂須賀正恒(はちすかまさつね)
- 指定:国宝
- 太刀 銘 正恒
- ふくやま美術館蔵
- 長さ 2尺5寸6分(77.6cm)
- 反り 9分弱(2.5cm)
正恒は友成と並んで古備前物の双璧とされるが、作刀が古備前一類の中で最も多く存し、それらには種々の銘振りが見られ、また姿態や地刃の作域も多岐であることから、平安末葉より鎌倉前期にかけて同銘数工が存在した可能性が考えられる。なお古伝書には七種の正恒があったとして、備前以外にも備中・豊後に同銘をあげているが、豊後の正恒の確信しうる在銘作は未見である。一般に正恒は友成に比して、太刀姿の美しさや地刃の古様さでは譲るが、鍛えのよさや刃文に洗練味がある点では勝る感がある。
蜂須賀正恒は正恒の作中もっとも古調を帯びた出来を示し、流石に鍛えも見事で、刃中の豊富な働きと深い味わいは格別のものがあり、しかも太刀姿の優美さではこの右に出るものを見ない。完存の点からも出来のよさからも正恒中最高の水準を示すものの一口である。
阿波徳島藩主蜂須賀家に伝来した。蜂須賀家の蔵品入札は、昭和八年十月、東京美術倶楽部で行われ落札値は10,000円であった。
形状は、鎬造、庵棟、腰反り高く、元と先の身幅に開きあり、踏張りつき、先に行って伏しごころを示し、小鋒に結ぶ。鍛えは、板目に杢交じり、総じて肌合いが細かく、よく練れて整美、地沸微塵につき、細かに地景交じり、地沸映り立つ。刃文は、直刃調に浅くのたれ、腰元は焼幅狭いがそれ以外の部分は焼き幅広目であり、殊に物打ち辺が広く、総体に小乱れ・小丁子・小互の目調の刃など交じり、足・葉繁く入り、匂深く小沸あつくつき、ささやかな砂流し・金筋・ほつれかかり、区際は若干の焼き落としを見せる。帽子は、焼深く直ぐごころに小丸に返り、掃きかける。茎は生ぶ、先浅い栗尻、鑢目勝手下がり、目釘孔四(上より二番目が生ぶ孔)
附帯する金梨子地桐紋蒔絵糸巻太刀拵は江戸時代初期に制作されたもので、金具は赤銅魚子地に桐紋を金色絵であらわしている。鞘は金梨子地に桐紋を蒔絵で散らし、柄は紫の組糸で菱状に巻く。極めて丁寧な製作であり、優れた一口である。
(参考文献:日本刀大百科事典より転載・引用・抜粋)
(法量) | |
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長さ | 2尺5寸6分(77.6cm) |
反り | 9分弱(2.5cm) |
元幅 | 9分6厘(2.9cm) |
先幅 | 5分6厘(1.7cm) |
元重ね | 2分弱(0.6cm |
先重ね | 1分弱(0.3cm) |
鋒長さ | 8分3厘(2.5cm弱) |
茎長さ | 6分3厘(19.1cm) |
茎反り | 1分(0.4cm) |