山鳥毛(さんちょうもう)

  • 指定:国宝
  • 太刀 無銘 一文字 (号:山鳥毛)
  • 長さ 2尺6寸5分(80.3cm)
  • 反り 1寸0分5厘(3.18cm)

 

米沢の上杉家伝来の太刀の異名で、刃文が山鳥の毛のように華麗なところからの命名であろうが、山焼亡という別名もある。これは山火事がえんえんと燃えさかっている刃文からの命名であろう。
上杉家の刀剣台帳では、上杉謙信が弘治2年(1556)10月、上州(群馬県)へ出馬のさい、白井(北群馬郡子持村)城主:長尾憲景が上杉謙信に贈ったもので、備前長船兼光の作となっている。なお、「双林寺伝記」にも「兼光 号山焼亡」とある。しかし、無銘であるので、現在は備前一文字の作と考えられている。上杉景勝もこれが気に入ったとみえ、上杉景勝公御手選三十五腰の一つに入れている。昭和12年12月24日、重要美術品人展、昭和15年5月30日、旧国宝(重要文化財)に指定、戦後は上杉家を出て昭和36年4月27日、新国宝に指定されている。

「上杉家刀剣台帳」
乾七号 銘文等:太刀 無銘(一文字) 号銘等:山鳥毛・山焼亡とも 刃長:二尺六寸一分 外装:合口形打刀拵 景勝公御手選: 景勝公上秘蔵 御重代 三十五腰の内
指定月日等:重要美術品(打刀拵附) 昭和十二年十二月二十四日、重要文化財(打刀拵附) 昭和十五年五月三十日、国宝(打刀拵附)昭和三十六年四月二十七日 備考:謙信公上州白井城に出馬の節長尾左衛門尉憲景より献上焼刃の美なる山鳥の尾毛、山野のの燃ゆる状に似たるを以て其模様の形容

乾第七号
一 一文字刀 山てう満うト号ス
無銘
長 弐尺六寸壱分 両面棒樋
拵 塗鮫革巻頭角縁赤銅無地目貫両差赤銅虎金彩鎺上金下銀鵐目金袋茶金襴鐔無
御由緒 「○」「景勝公御書付ニ上秘蔵 一 山てうまうトアリ、」
御重代三拾五口腰ノ内、弘治二二年謙信公上州御出馬ノ節白井城主長尾左衛門尉憲景ハ兼光作山鳥毛ノ刀ヲ献ス又山焼亡トモ云うフ蓋シ焼刃ノ美ナル鳥毛ノ如ク山野ノ燃ル如キヲ以テ其模様ヲ形容シタルモノナリ景憲ハ長尾権帥郎四郎ノ祖ニシテ同家ノ□書ニ見ユ
刀剣五番桐塗箪笥 壱ノ段

形状は、鎬造、庵棟、身幅広く、重ね厚く、長寸で豪壮であり、腰反り高く、踏張りつよくつき、猪首鋒となる。鍛えは板目に杢交じり、地沸細かにつき、総じて肌立ちごころとなり、淡く乱れ映り立つ。刃文は大丁子乱れ、重花調となり、頻りに焼頭が鎬筋を超え、飛焼交じり、足・葉繁く入り、匂勝ち小沸つき、腰元と物打辺は沸めだってつき、砂流し・金筋かかり、匂口明るく冴える。帽子はのたれ込み、表は先掃かけ、裏は小丸に僅かに返り、ともに飛焼かかる。彫物は表裏に棒樋を掻き通す。茎は生ぶ、先栗尻、鑢目勝手下がり、目釘孔二、無銘。

黒漆合口打刀拵は謙信の嗜好によるもので、太刀姿そのままの体配に、柄頭を大きく張らせた柄に刃方の肉を薄くした鞘で鐔を用いない合口とした拵である。この様式は上杉家の拵にみられる他、法隆寺西円堂遺品の中にもみられるもので、腰刀の要素が加わった特殊な拵である。いかにも柄頭が太く重いようにみえる拵ではあるが、長寸の鞘の反りが高く、鐺を張らして全体の調和がとれている。鐔を用いないのは、反りが高いため先が軽すぎてしまうためともいわれている。目貫の位置が一般と異なり腰方に表裏揃ってついている。栗形は特殊な山形となり、返角はとくに棟寄りに付いている(補修している)。桃山時代の作例としては上杉家独特の様式といえるものである。

黒漆合口打刀拵
総長:110.2cm 総反り:6.9cm 柄長:27.8cm 鞘長:83.7cm 鞘反り:3.6cm
頭縦:4.2cm 縁縦:4.1cm 鞘口縦:4.1cm強 鐺縦:3.5cm弱
鞘口~栗形:7.9cm 栗形~返角:14.4cm弱
柄:黒塗鮫、藍韋平巻(裏及び頭に結びつける)
鞘:黒漆塗、両櫃、反り強く鞘口、鐺張る。
頭:角
縁:赤銅鑢地、樋有
目貫:赤銅猛虎図容彫象嵌
笄:赤銅魚子地三匹虎高彫象嵌、蕨手金象嵌
小柄:赤銅魚子地二匹虎高彫象嵌
下緒:小桜文藍韋

(参考文献:日本刀大百科事典より転載・引用・抜粋)

(法量)
長さ 2尺6寸5分(80.3cm)
反り 1寸0分5厘(3.18cm)
元幅 1寸1分5厘(3.48cm)
先幅 7分2厘(2.18cm)
元重ね 3分弱(0.91cm)
先重ね 1分6厘弱(0.5cm)
鋒長さ 1寸1分(3.33cm)
茎長さ 7寸6分5厘(22.18cm)
茎反り 2分5厘(0.76cm)

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